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元禄忠臣蔵

1941、42年に公開された映画『元禄忠臣蔵』を銀座の映画館で観る。
大好きな溝口健二監督、長回しで有名な監督だ。
モノクロながら画面の美しさが引き立つ。
映画の中に流れる時間が、今と違ってゆったりしている。
セリフもないままに、画像だけで内面を映し出す技術と感性に驚かされた。
これだから、映画、なんだ、と改めて思う。
今の映画は(芝居やオペラも含めて)、説明的な演出が多すぎる。
観ているほうの想像力を削ぐような演出には、たびたび腹が立つものだ。

しかしながら、疑問。
昭和16年というと、もはや戦争もかなり本格的になってきているはずなのに、
どうしてあんな映画が撮れたのだろう。
「大義のために死ぬ」というテーマがあるにせよ、
それほど戦意高揚させるほどの内容とは思えないのだけれど。
しかも、出ている役者のほとんどは前進座。
もはやかなりキナ臭い世情になっていた時代だと思うのだけど。

それにしても、古い映画はいい。
画像に人の思いがこもっている。
いや、今の映画だってこもっているものは多々あるのだろうけれど。