No.129の記事

芝居見物

今日は木挽町へ芝居見物。
これはつまり、東銀座の歌舞伎座で歌舞伎鑑賞、という意味なのだが、
私にとっては、芝居見物、というほうがしっくりくる。
本来、歌舞伎はそういうもののはず。
歌舞伎は大学での専門だったので(とはいえ、まったく勉強してない)
すでに四半世紀にわたって観ている。(毎月欠かさず、ではない)
だが、今日の忠臣蔵外伝『忠臣連理の鉢植』は初見。
なんせ東京でやるのは、33年ぶり。
話自体はいい話だ。
赤穂浪士である神崎与五郎(歌舞伎では千崎弥五郎)に手柄を
立てさせようとして、彼に惚れたおたかという女性が、
吉良(歌舞伎では高師直)の愛妾になり、屋敷の絵図面を盗み出す。
それを弥五郎に渡したところで、駕籠の中で自害する。
駕籠の内から血が飛び、周りは誰も気づかないが、弥五郎だけがそれに気づく。
女の自己犠牲、これぞ無償の愛、という典型的な話。
もちろん、現代から見れば、そうまでしなくても、という話だが、
こういう話は大好き。
惚れた男のためにそこまでできるなんて、幸せな話だから。

打って変わって、今はオペラ『カルメン』をテレビで観ている。
ホセはミカエラという誠実な恋人がいながら、
カルメンという自由を愛するジプシーに恋して身を持ち崩す。
最後は、他の男に心移したカルメンを殺してしまうのだが、
しかし、世の中の「芸術」と呼ばれるものは、ほとんどが
惚れたはれたの話だなあ、とつくづく思う。
それにしても、アラーニャは、やっぱり当代一のホセ歌手だ。
この人のホセはナマでも聴いているが、
殺されたってカルメンと一緒にいてやる、という愛憎が
歌によく出ている。ぞくぞくするような迫力だ。