No.344の記事

肉体と精神のピーク

今週はバレエを2本観た。
グルジア国立バレエ団の「白鳥の湖」と「ドン・キホーテ」。
グルジア国立バレエ団は、アメリカンバレエシアターで人気実力ともにあったニーナ・アナニアシヴィリが芸術監督になって来日した。
アナニアシヴィリというダンサーは、おそらく私がいちばん好きなダンサーのひとり。ダイナミックな踊りに繊細な表現力が魅力だった。

一昨年だったか昨年だったか出産し、もう踊らないのかなあと思っていた。ところがなんと見事に復活。

あれほど表現力豊かな白鳥には、そうそうお目にかかれない。
もちろん、若いときほどの激しい踊りは無理かもしれない。(それでも充分に動いていたし、激しい踊りでも軸がぶれないのはさすが)
それを補ってあまりある表現力だ。

バレエという芸術は、どこか儚い。
容姿や体力は、誰だって若いときのほうがいいに決まっている。だが、その若いときには、深い精神性は表現できない。
アナニアシヴィリ44歳。今の表現力はピークに近いのかもしれない。だが、おそらく、20代より高く飛べることはないだろう。

体力と精神のピークが決して一致しない芸術。
だが、いつの年代でも、彼ら彼女らは、そのギャップを埋めるべく、血のにじむような努力を重ねる。
そこが美しいのかもしれない・・・。