6月、新橋演舞場で新派公演が上演されている。
昼は「婦系図」、夜は「鹿鳴館」だ。
新派120周年記念。
歌舞伎を見始めて新派も見るようになったのだから、四半世紀以上見ていることになる。
今回は「婦系図」を見た。
いやあ、泣ける泣ける・・・。
乱暴な言い方をすると、新派の「婦系図」とオペラの「椿姫」は、義理ある人に無理矢理別れさせられた男女、そして最後に女が死んでしまうという点で似ているのだが、決定的に違うのは最後の幕切れ。
椿姫では、別れた男が死の床にある女の元にかけつけ、彼に再会できた喜びのうちに、彼女は死んでいくのだが、新派は間に合わないというシビアな結末。
このあたりが「日本の美学」なのかもしれないなあと思う。再会して魂が救われる、というヨーロッパ的な結末ではなく、やりきれない、どうしようもない悲哀の中に、日本人の美学が隠されている。