No.439の記事

多忙なのは・・・?

仕事が忙しい〜なんて言いながら、このところ柳家さん喬さんの追っかけ状態。前から大好きな噺家さんではあるが、9月の池袋長講から、中毒のようになってしまっている。

今日は鈴本、小三治さんの代演で「子別れ」。
いやもう、泣いた泣いた。
ここ数週間、さん喬さんにどれだけ泣かされたか。
この人は場の切り替えが絶妙なのと、
なんといっても人情を描くのがうまい。
ひとりの人間を幾重にも描き出し、なおかつ終始一貫、その人の心持ちをきちんと描いて見事きわまりない。
たとえば子別れで、息子が50銭もっているのを知った母親が、人から盗んだものではないかと嘆き、折檻しようとする場面。多くの噺家は、母親をヒステリックに描き出すのが、さん喬さんは深い悲しみをもって母を演じた。そして、最後の最後に、別れた夫と再会、またよりを戻そうというときに、「自分ばっかり好き勝手なことしやがって、ばかやろー」と今までの思いの丈をぶちまける。

それまで必死で耐えてきた母親の心情が一気にあぶり出される。

うまい噺家はたくさんいる。おもしろい噺家もたくさんいる。だが、うまくておもしろくて、なおかつ「人間」を描ききれる噺家はそうはいない。