No.58の記事

忙中閑あり

言い訳めくが、忙中閑あり・・・というか時間は作り出しひねり出すものなのかも。
午前中から仕事、という珍しい日々が続く中、
昨日は池袋演芸場へ。大好きな菊之丞と市馬の二人会。
菊之丞さんは、女性ファンが多くて大人気。
「元犬」「付き馬」の2席。いやー、うまいなあ、本当に。
話の運びが非常にスムーズで、なおかつ魅力的。
すんなり噺の中に入り込めてしまうのは、彼の天賦の才なのか努力の賜か。
非常に芝居的な噺の作り方をする人だ。

今日も午前中から仕事、その後、有楽町朝日ホールの名人会へ。
お目当てはトリの小三治。
噺は「小言幸兵衛」。これまた絶品。
荒唐無稽の滑稽な噺なのに、妙なリアリティがあって涙が出るほど笑った。
この人は存在自体がすでにおかしい。
自分の世界に引っ張り込む吸引力がある。
高座に上がって、客を見渡して「えー」と言ってお茶を飲む。
その姿がもう、なんだかおかしいのだ。

だが、噺家ってのは不思議なもの。
どんなに他の客が笑っていても、なぜか声がイマイチ好きじゃないとか、
微妙な間が好みじゃないとか、些細なことで好き嫌いが分かれてしまうように思う。
これは歌舞伎役者なども同じだけれど。
みんなが「うまい」と言っていて、客観的にはうまいとわかっても、
好き嫌いはまた別の話なのだから。
男女のことも同じかもしれないが・・・。
好みってのは不思議なものだ、とつくづく思う。