No.78の記事

いけないと思いつつ・・・

古今亭菊之丞さんの独演会へ。
私には時間がないのよー、締め切りがーと思いつつ、
やはり行ってしまった。
「三枚起請」と「立ちきり」。
三枚起請は、ネタおろしだそうだが、三人の男がくっきり浮かび上がり、
なお吉原の喜瀬川(? もとは上方落語で小照という名前)の
開き直りがなんともいえずおかしい。
これからもっともっとこの人らしい話になっていくのだろう。
「立ちきり」は以前も聞いて泣いたのだが、今日も号泣してしまった。
鼻が真っ赤で帰るに帰れず、トイレに入ってなんとか立ち直ったのだが、
出てきたら、菊之丞さんが客ひとりひとりを送り出していた。
いちばん最後となってしまった私、何も言えず最敬礼だけして帰った。
彼の「立ちきり」は、小春の初々しさ、だんだん力がなくなっていく様子が
うまいのと、おかみさんがなんとも言えずいい味を出していて泣けてくる。
男を思って気持ちが弱っていく女心・・・がたまらなくいい。
今の菊之丞さんではなければ、できない小春なのだと思う。
10年後、きっともっとうまくなっているだろうけれど、
そのときはやはり、もう少し熟した小春になっているかもしれない。
演じる人と演じる役は、同じように年をとるわけではないけれど、
今のような一直線な小春ではいられないはずだし、
それでいいはず。だから、落語にしろ芝居にしろ、ずっと見続けることが
大事なのではないだろうか。